DESIGNERS OFFICE
デザイナーズオフィス入所企業紹介

代表者名

森野 亮平

Website

https://www.studio-wharf.jp

連絡先

CREATOR’S VOICE
クリエイターズボイス-
入所企業インタビュー

名刺一枚からチラシ、パンフレット、Web制作、さらには写真・動画、展示会ブースや店頭プロモーションまで、多岐にわたる広告戦略で企業の課題を解決する株式会社WHARF。広告の目標や市場などの全体像を捉え、広い視野から多様なアイデアを提案できることを強みとしている。 設立から10年が経ち、WHARFは今新たなステージを迎えようとしている。代表の森野亮平さんにお話をうかがった。

ツールの制作にとどまらない
多彩な広告戦略で課題解決をサポート

株式会社ワーフ 森野 亮平 氏

ゴールはツールの制作ではなく、企業のこれからを考えること

「ツール単体の制作依頼を受けた時でも、できるだけその後につなげ、お客さんとお付き合いをする回数を増やすようにしています」と話す森野さん。事業の柱は広告制作ではあるものの、それがゴールではない。ゴールは、クライアントの課題を解決すること。サービスや商品の強み・魅力など良い面を見て何ができるかを考え、広告戦略を提案している。 例えばある住宅会社に対しては、若手社員の採用に向けた取り組みとして、WEBマガジンを立ち上げて地元の若い人材を制作スタッフとして巻き込むことで認知度を向上させる手法を提案した。ツールを制作するだけにとどまらず、俯瞰した視点で企業の将来に向き合って柔軟なアイデアを提供するため、長年付き合いが続いているクライアントにとって、森野さんは広告制作のディレクターというより困ったときになんでも相談できるコンサルタントのような存在になっている。

ニューヨーク生活から広告業界へ。異色の経歴で制作ディレクターに

昔から独立志向だったという森野さん。父や親戚に自ら事業を営む商売人が多く、正月に集まれば仕事の話で盛り上がる姿を見て「楽しそうやな」と思っていた。大学卒業後は旅行会社に就職しチケット販売業務を担当するものの、独立はすでに頭にあったという。大学時代に祖父からフィルムカメラを譲り受け、自身でも趣味程度に撮り歩いていたことから、当時の同僚である友人と「二人で写真屋さんを開こう」と話し合っていた。 入社前には、父からこんな言葉をかけられていた。「会社の名前や肩書きではなく、自分の名前で仕事をしなさい」。この言葉を意識して仕事に向き合ううちにリピーターが増え、顧客との関係性も築かれていった。友人と二人で会社を退職した後は、写真を学ぶためにいきなり渡米することになるのだが、これは旅行会社で親しくなった顧客からニューヨークのアルバイトを紹介されたことがきっかけ。驚くほどの行動力とコミュニケーション力でニューヨーク生活を実現させ、アルバイトで生計を立てながらアメリカ在住のフォトグラファーのワークショップに通って写真の基本を学んだ。

帰国後は、さらに写真を学ぶためにスタジオに就職しようとしたが叶わず、縁あってリクルートの制作部に契約社員として入社した。たまたま受けたバイトの面接で、たまたま空いていたディレクター職に誘われたのだ。偶然が重なっただけに見えるが、面接で「写真でビジネスをしたい」と話す森野さんの可能性が評価されたのかもしれない。結果的にこの出来事が、広告との出会いに繋がった。
仕事は主に、大学の学校案内や雑誌広告の制作で、その傍ら毎日のように「企画立案シート作成」の課題が出された。これは、広告の目標やターゲット、顧客や市場の現状、課題、解決策などを設定し、広告のコンセプトを作ってデザインラフ案にまで仕上げるというもの。「なぜこのターゲットを設定したのか?なぜこの媒体なのか、一本筋が通るまで『なぜ、なぜ』を問われます。コンセプトができると、キャッチコピーを翌日までに300本書く『コピー道場』も。寝ながらコピーを作っていたこともありました(笑)」。 タフな現場で鍛え上げられたおかげで、全体像を捉えた広告の提案力が身についた。「あの半年で20代全てを凝縮するような学びを得られました。20年経った今でも、当時の経験が今のアイデアの土台になっています」

顧客とのコミュニケーションから次々に生まれる広告戦略

企業の課題を解決する広告という仕事の楽しさに惹かれた森野さんは、その後制作会社でのディレクター勤務を経て、友人と共に念願の独立を果たし、広告制作会社を設立した。「楽しかったですね。これからやっていくぞ!という勢いがあったし、Web経由でお客さんも増え、人員も一人増えました」。3年目からは、クリエイティブ面に注力するために写真撮影を再開。一年間、ライティングの勉強のために学校に通ったり、知人のカメラマンのアシスタントをしたりと撮影技術を学び直した。学ぶほど「クライアントの雰囲気や独自性を伝えるには、やっぱりクリエイティブが大切」と考えるようになり、クリエイティブを全面に押し出した会社を作ろうと決意。友人と会社を設立してから5年が経過した2013年、あとのことは友人と後から入社した後輩に任せ、自身は独立してWHARFを設立した。
現在は、デザイナーやライター、コーダーなど外部ブレーンと連携してさまざまな広告物を制作しているが、撮影は自身で行うこともある。「撮影現場の雰囲気が好きなんです。特にプロフィール写真の撮影は、企業の代表や社員の方とのコミュニケーションの場にもなるので自分自身で撮りたいですね。顔を合わせてしっかり話ができていれば、広告でもさまざまな展開を提案できます」。 会社案内のパンフレット制作の際に「理念と社風を地域に浸透させる」という目標を立てて以来、企業活動に深く関わるようになった会社もある。担当者とも「次は何をしようか」と未来の展開についてあれこれ話し合う仲で、これまでに名刺やWeb、経営理念やスローガンポスター、社章、採用ツール、社用車ラッピング等々、多岐にわたるツールの制作を手がけてきた。最近では、社内コミュニケーションの円滑化のために作り始めた社内報が100号を迎えたという。「SNSやWebなど、発信する方法はかなり増えましたが、伝える手段が変わっても根本は『誰に何を伝えるか?』。原点に立ち返り、企画やコンセプトメイクを大切に、企業の情報発信の役に立ちたいと思っています」

スタジオの新設や拠点拡大。これから生まれる新しいWHARFとは

ODPに入所したのは2020年。広い撮影スペースを使用できることは魅力の一つだが、起業家同士のコミュニケーションも楽しんでいる。「先日は久しぶりに交流会に参加しましたが、やっぱり雰囲気がいいですね。起業したばかりの人たちが、あれがしたい、これがしたいと熱く語る場が好きなんです」。
森野さん自身もまた、新しい事業を始めようとしている。一つは、スタジオの運営だ。「僕自身は制作から離れ、今後は事業運営に注力するつもりです。ただ、もともと好きだったプロフィール写真だけは顧客と接点を持つ場として残したくて、そのためのスタジオを作りたいと考えていました。そんな時に、僕にカメラをくれた祖父が亡くなったんです。僕の写真が広告に掲載されるたびに喜んでくれていた祖父の死をきっかけに、改めて『もっと写真で何かできないか』と考え、スタジオを写真館としても使うことにしました」。この写真館では、「社員向けの家族写真撮影」という新たな福利厚生サービスの提供を始める予定だ。若手カメラマンをメインに据え、4月のオープンに向け着々と準備が進んでいる。
もう一つは、全国各地でスタッフを採用し、複数の拠点を作ること。昨年10月には横浜在住のデザイナーを採用した。今年3月には札幌にも拠点ができる予定で、各地に小規模の拠点を作っていくという。「横浜のデザイナーは写真のスタイリングが得意なので、その技術を活かした商品撮影代行サービスやECサイト制作サービスを始める予定です。人が増えるたびにその人の得意を活かし、事業の幅を広げていきたいですね。スタッフがそれを楽しんでくれたら、自分のモチベーションも上がります」。
全国各地に小さなWHARFが生まれたら、どんな化学反応が起こるのだろうか。予想のつかないこれからのWHARFに期待が高まる。

ニューヨークのワークショップでの課題に対するスナップ写真
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横浜のデザイナーによるフォトスタイリング
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プロフィール撮影・人物写真
プロフィール撮影・人物写真
ライティングの勉強
ライティングの勉強
スタッフやクライアントなど皆で作る撮影現場の雰囲気
スタッフやクライアントなど皆で作る撮影現場の雰囲気
会社案内などのパンフレットや広告の企画・デザイン・写真や動画の撮影をしています
会社案内などのパンフレットや広告の企画・デザイン・写真や動画の撮影をしています

クリエイターズボイス公開日 : 2023年2月28日

取材・文 : 山本 佳弥