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・映像撮影・編集
・SNS運用代行
人は今ある枠を広げ、さらに超えることで、新たな視野を持つことができる。43歳で全くの異分野であった映像制作の世界に飛び込み、45歳で株式会社tsujiryuを立ち上げた辻花隆介さん。企業の商品やサービスのプロモーション映像からYouTubeチャンネルの運営代行、テレビCM、さらにはWebサイト製作やSNS運営代行まで幅広く手掛けているが、常に自分の枠を越えようとしている。そうした事業内容やその根底にある想いの源流についてじっくりお聞きした。
株式会社tsujiryu 辻花 隆介 氏
企画から運営までワンストップでの映像制作を中心に事業展開している株式会社tsujiryu。しかし、代表の辻花さんは依頼に対して「動画であるべきかどうか」というところから考えると言う。「誰に対して、どんな映像で、どのメディアでということはもちろん考えますが、そもそも本当に映像でいいのか?それで効果があるのか?というところから考えています。映像制作の依頼であっても、チラシや漫画などの紙媒体やアニメーション表現の方がいいんじゃないか?というご提案をすることもあります」と語る。 ある飲食店からSNS運営についての依頼があった際、ミーティングを重ねた結果、辻花さんの出した提案は「まず店舗ファサードを整えましょう」というものだった。SNSで店の宣伝をしても、来店したお客様が失望されては元も子もない。ODPで知り合ったデザイナーにファサードのサインデザインの刷新を依頼し、店内の内装や配置を変更する抜本的な改善を行った上で、SNSの立ち上げやコンセプトの提案、写真の撮り方や運営のノウハウなどをレクチャーした。「ただ依頼されたことを実行するだけではなく、お客様の利益をきちんと考えて提案をしたいので、もう何でも屋みたいになっていますね。それはお客様がどれだけ利益を得られるかを常に考えているからです。クライアント企業の伴走ができる体制をとっていくことを会社のビジョンに掲げているので、映像以外であってもお客様の力になれないかなといつも思っています」。
映像制作を中心に事業展開しながらも、柔軟な提案でクライアントの利益を追求する姿勢の根底には、「グッドサプライズをしたい」という思いがあると辻花さんは語る。「たとえメールや電話だけのやりとりであっても、そのクライアントさんの人物像をイメージしながら、こうやったら喜んでくれるやろうなということを先回りして考えています。そういうグッドサプライズを積み重ねていくことが信頼になりますし、僕自身もそれをされると嬉しいですからね。もちろんそこに見返りは求めていないですが、仕事をしていく上では必要なことだと思っています」。 そうしたグッドサプライズを意識するようになったきっかけは、20代に観た一本の映画だった。映像で誰かを驚かせたり喜ばせたりするストーリーに衝撃を覚え、映像を通して人の感情を動かすことに興味を持ったという。「30歳の頃に知り合ったブライダルの映像制作会社をしている友人がいるんですが、幸せな場面や表情を切り取って映像化しているということがすごく羨ましかったんです。人を感動させるような映像を作っているということがすごく素敵だなって。普段観ているテレビとはまた違った、映像が持つ力の凄さを感じましたね」。
「とはいえ、まったく映画マニアとかではなかったし、当時は映像に興味なんてなかったんですよ」と言う辻花さんが大学卒業後に選んだ道は、当時主流であった携帯電話、いわゆるガラケーに電飾を埋め込むカスタマイズショップを運営する個人事業だった。大阪のアメリカ村や京都に店舗を構え、日々ハンダごてを手に携帯電話をカスタムしていたが、スマートフォンの台頭により事業を撤退。30歳からは、アパレルショップと飲食店を運営する家業の会社役員として仕事をすることとなった。しかし、2020年からコロナ禍が世界中に影を落とし、外出や外食を控える世の中で、家業は大打撃を受け収益が急激に悪化。「このままじゃだめだ。何か新しいことにチャレンジしなくてはと思ったんです。家業を続けていくこともできたんですが、これを何かの機会と捉えて新しい道を探っていこうと考えました」。 しかし、当時は誰にでも積極的に会いに行ける状況ではなく、一人で思い悩む日が続いた。そんなある日、ふと思い浮かんだのが、20代で衝撃を受けた映画であり、幸せと感動に溢れるブライダル映像であった。すぐにブライダル映像を制作している先輩に連絡をとってみたが、やはりコロナ禍によるダメージはブライダル業界にとっても深刻なものだった。しかし先輩から「うちで仕事をしながら技術を学んでみてはどうか」とありがたい打診を受け、辻花さんは映像制作の世界に飛び込んだのだった。しかし、この時すでに43歳。ひとまわり以上年下のスタッフに囲まれながら修行をしていった。「でもすぐに老眼との戦いが始まったんです。ブライダルは一発撮りだし、ピントが合っていないだけで商品にならない。遠くを見て瞬時に近くの小さいモニターを確認するという素早い動きを何度もするのですが、最初はその動きに苦戦しましたね。現場に順応するために色々と試行錯誤して克服したことも、自分にとっての貴重な経験値になりました」。
ブライダルの現場で映像制作に関する一連の作業を基礎から徹底的に学んでいた辻花さんであったが、身に付けようとしていたのは技術だけではなかった。どのような流れで映像を形にするのか、どのようにお客様に届いて、いかに売上になっていくのかといった経営者側の知識も吸収していった。そして、2021年3月に「辻花プロダクツ」として個人事業をスタートさせ、2022年9月には「株式会社tsujiryu」として法人化。現在は目先にある売り上げや収益を追い掛けるよりも、10年先を見据えた長期的な物事の捉え方に意識を置いていると言う。「2023年に双子の子供が生まれたことと、肩腱板断裂の手術をしたことが大きいかもしれません。人生であったりライフプランなどについてさらに長期的に考えるようになりました。映像の仕事も今後どういう立ち回りをしていくのかを考えると、撮影や編集はチーム化していき、自分はディレクションや企業をサポートする伴走をメインにしていくような方向転換が必要なのかなと考えています」。 長期的な視野を持ち、そうした転換を図っていく上で、どのようなことを大切にしていきたいかをお聞きすると、「お金を使うこと」という意外な答えが返ってきた。クリエイターは自身の技術やアイデアをクライアントに提供することで対価を得ている。これからは辻花さん自身もクライアントとなって他者から価値を提供してもらい、チャレンジ出来る枠を越えていきたいと言う。「だからお金をもっと使って事業投資していきたいんです。会社とはいえ自分一人なので、技術やアイデアの枠も狭くなりますよね?そうなると自分が得られるチャンスのキャパシティーを越えられない。この年齢だからこそ出来ることもありますが、色々なプロの視点や技術で自分の今ある枠を広げて、さらに越えていきたいです」。株式会社tsujiryuの辻花隆介という唯一無二のフィルターを通して生み出されるグッドサプライズもまた、未来の誰かの枠を大きく広げ、それを越えるための伴走をしていくのだろう。
クリエイターズボイス公開日 : 2024年9月26日
取材・文 : 37+c 大西 崇督